推手とは、太極拳をはじめとするさまざまな中国武術における練功法のひとつです。
互い向かい合って立ち、腕で接触できるくらいのごく近い間合いから、接触を保った状態で相手の隙や重心の偏りを感覚によって探り、感覚を磨く練功です。ルールやコンセプトの違いはあるものの、「套路(主に独りで行なう型稽古)と推手(相手と共に行なう)のセットで功を養う」という考え方は中国武術において広く共有されています。
家伝としてそれぞれの地域で独自に伝承されていた格闘技術が、近代化の影響を強く受けた清朝末期頃に、「武術(圀術)」として再定義され、上海精武体育会、北平体育研究社、南京中央国術館といった全国的な機関によって公開・研究されるようになってから、様々な「名流」が国家の支援を受けて大々的に組織化され、流派同士の友好的な技術交流が進みました。この流れは第二次大戦後、文化大革命によっていったん中断されてしまいましたが、1980年代に伝統武術の復興がなされて以降、推手においても、ルールを統一し、格闘技として行なう試みがなされるようになってきました。1994年には中国国家体育委員会によって、太極推手全国大会が行なわれています。
台湾では、中華民國太極拳總會による統一ルールが整備されており、継続的に全国大会、世界大会が開催されています。特に世界大会はオープン大会となっており、世界各国から選手が参戦しています。
また、台湾における国体種目にもなっており、学生の部活動から高齢者のサークルまで、さまざまな場所で幅広く行なわれています。
当連盟では、この「競技格闘技として行なう推手試合」を、「競技推手」と名付け、主に台湾ルールに基いたセミナー・日本大会・練習会の開催、台湾大会参加等を通じて、流派を超えた武術交流を広げ、深めていくことを目的として、2017年より活動を開始しています。